平成14年(行ウ)第63号 損害賠償等請求事件
原 告  吉 田  勇 外1名
被 告  半 田 市

準 備 書 面

平成15年2月13日


(住所)〒475−0833
    半田市花園町4−12−7
原 告    吉田  勇
(住所)〒475−0965
半田市新生町6−27−1
TEL・FAX  0569-27-7399
原 告    松村  薫
(送達場所)    同 上

名古屋地方裁判所
民事第9部BO係 御中




第1 原告らの主張 1 「基金」取り崩し処分の違法性
(1) 地方自治法第241条は基金の設置、運用及び処分等について規定している。同法同条第1項では「特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立てるための基金」及び「特定の目的のために定額の資金を運用するための基金」の2種類があるとしている。
    半田市国際交流基金条例(以下「基金条例」という。)は、そもそも同条例第2条の設置目的である「国際交流の推進を図るため」という「目的」自体抽象的であり、「特定の目的」を具体的に示しているとはいえず、地方自治法の「基金」設置の趣旨を満たしていない。
すなわち、「基金条例」自体が不備である。

(2) 半田市国際交流基金(以下「基金」という。)の前身である半田市姉妹都市交流基金設置の「目的」は、半田市国際交流市民委員会の行う事業の財源確保のため半田市姉妹都市交流基金から生ずる収益を活動費の一部に充当する「目的」で設置されたものであり、指定寄付金の積立金を原資としてその収益を経費に充てるための運用がなされていた。そのことは、昭和63年3月16日の第2回半田市議会定例会議事録P211、P212及びP216、P217に記載されている(甲第2号証の1)。
従って、「定額の資金を運用するための基金」であったことがわかる。

(3) 「基金条例」は昭和63年9月の半田市議会定例会で設置説明がされたことが議事録P75、P80に記載されている。(甲第2号証の2)。平成元年から平成5年までは一般財源から2000万円ずつ積み立てられ、「基金」の総額が1億円余りになったが、平成5年以降は、半田国際交流協会(以下「協会」)の設立に向けての検討がされ始め、「基金」の「目的」そのものが、財団法人化を目指す方向に変わっていったことが、平成5年6月第4回半田市議会定例会議事録P55からP60に記載されている(甲第2号証の3)。

(4)  被告は地方自治法第241条第3項により、本件における「基金」の取り崩しが、当該「基金」の目的のためになされていれば可能であると解していることから、同条1項に定めるところの「特定の目的のために財産を維持し、資金を積み立てるための基金」であると主張していると原告らは認識できる。そうであるならば、その「基金」は特定財源を確保するために設けられた性質であるが故に、処分規定を設けなければ処分できない種類の「基金」であると思われる。その根拠は、処分規定を設けている条例があるからである。
被告の解釈によれば、全ての「基金条例」には処分規定を設けなくとも処分することが可能であり、同条第8項を設ける意味はない。   従って、処分規定を設けていない本件の「基金」の取り崩しは違法である。


2 協会に対する補助金支出の違法性について
(1) 半田市においては、補助金等の適切な執行を図るため、半田市補助金等判定会議(以下「判定会議」という。)が設置されている(甲第3号証の1・2)。同要綱第2条には、会議に付する「補助金等」の範囲は、市が市以外のものに対して支出する次の各号に定めるものとすると規定している。
財政支援団体である任意団体の「協会」に対する補助金支出が、公益上必要がどうかの判断も、「判定会議」を通じて審査されてきた。しかし、「協会」の実施する事業内容は市と一体となった友好都市・姉妹都市事業が中心となっており、言わば市の政策として行っている事業が殆どである。わざわざ「協会」を設立して事業を行う必要性、合理性は全くない。その上、「協会」の専務理事は企画部長、事務局長は企画部秘書広報課主幹であり、多くの市の職員や議員が会員となり、その中には「判定会議」の構成メンバーも含まれている。そのような実態である「協会」の補助金審査に対し、公平・公正で客観的な判断がされているとは到底思えない。

(2) 「協会」に対する補助金については、企画部秘書広報課長である「協会」事務局長が、「協会」の運営に必要な支出額から会費等の収入ではまかない切れない差額分を算定根拠とした補助金額の算定をしており(甲第4号証)、全くお手盛りの予算措置である。
 公金である補助金を「協会」職員に対し、何の規則もなく市の職員に準じた給与として支払うなど、いちじるしく妥当性を欠いた判断であるといわざるを得ない(甲第5号証)。妥当性が無いからこそ、半田国際交流協会組織検討委員会の中間報告において、人事面に関するルールが無く安易に半田市に準じてきたことを改めるべきだという検討が市長、「協会」双方でなされているのである(甲第6号証)。

(3) 東海市では、平成8年9月5日付で補助金見直し基準の答申が第3者を含めた委員会によって出された(甲第7号証)。この答申では「社会の変化や財政状況を踏まえて補助金を見直すことは、地方公共団体の当然の責務である」と示されている。半田市はこれまでも補助金に関する数々の問題点を原告らより指摘されたが、行政改革を進めるために補助金等整理合理化の基準を作成したからといって、「判定会議」での基準のない裁量的意識の抜けきらない判断がされるのであれば、本当の改革にはならないばかりか、既得権益化した「協会」への補助金を今までの様に続けていくことは、「協会」存続のための補助金支出であり、補助金本来の趣旨を失っているに他ならない。従って、ペーパーカンパニーのような任意団体である「協会」に妥当性を欠いた内容の補助金の交付は違法である。



第2 住民監査請求対象行為に関する措置
  地方自治法第199条第7項によれば、監査委員の職務権限の範囲は財政支援団体である「協会」への補助金に関しても監査対象になりうる。   監査請求に先立ち原告らは2回にわたり、市長及び「協会」会長に対して質問状を提出した(甲第8号証の1・2)。その回答書は是正すべき検討課題があり、「協会」の組織と事業のあり方を早急に改善していく必要があると認めているものであった(甲第9号証の1・2)。にもかかわらず、結果的には早急に是正されなかったため監査請求に及んだものである(甲第10号証)。
 原告らは補助金の使途について違法性・不当性を主張したにもかかわらず、監査委員は、監査の必要がないとして監査対象としなかったため提訴に踏み切ったものである。従って、原告らの訴状の請求の趣旨の全てにおいて、監査は経たものと解すべきである。



第3 半田市の損害についての整理と訂正
  原告らは下記のように訴状における半田市の損害について整理及び訂正するものである。
1 本件訴状の「請求の趣旨1・2」における半田市が被った損害金は、平成13年度分の違法な「基金」の取り崩しによる1100万円及び平成14年度分の「協会」に補助金及び委託金として支出された1301万3359円であるとする。その主張は監査請求における陳述書の中でも述べている(甲第11号証)。

 2 訴状「請求の趣旨3」に対する不当利得分の給与額の特定は、職員のプライバシーの関係もあり、原告ら住民にとっては金額の特定をすることは困難であるため、大まかな金額にせざるを得なかったのである。



第4 責任の所在
  平成13年度分の「基金」の取り崩しをした平成14年3月の時点では「基金」の管理者は現市長の榊原伊三である。「基金」の取扱責任者は現収入役の佐藤利二である。(甲第12号証)「基金」取り崩しの決裁権者は、企画部長の山田兼雄、企画部秘書広報課長の船橋正巳である。「基金」取り崩しを指示したのは、総務部財政課長の柴田克美であるといわれている。
  平成14年の「協会」に対する補助金支出を適正だと判断した平成13年10月の「判定会議」の構成員は助役の杉村平八、収入役の佐藤利二、企画部長の山田兼雄、総務部長の岡戸幹雄である。そして補助金交付の最終決定権者は市長の榊原伊三であり、企画部長の清沢吉徳、秘書広報課長の水野茂も決裁権者である(甲第13号証)。従って、上記の者はそれぞれ半田市の損害を回復する責めを負うものである。



第5 訴状の補充と訂正
 1 訴状「請求の趣旨1」について
「被告は訴外榊原伊三に対し金2401万3359円の損害賠償の請求、そのうち、金1301万3359円については訴外杉村平八と連帯して損害賠償するよう請求をせよ。」と補充・訂正する。

 2 訴状「請求の趣旨2」について
「被告は、地方自治法第243条第3項の規定により、訴外佐藤利二、訴外山田兼雄、訴外船橋正巳、訴外柴田克美に対し連帯して1100万の損害を賠償するよう命令をし、訴外佐藤利二、訴外清沢吉徳、訴外岡戸幹雄、訴外水野茂に対し、連帯して1301万3359円の損害を賠償するよう命令をせよ。」と補充・訂正する。

   その理由として、原告らは住民監査結果の内容を参考に訴状を提出したが、一部判断を誤り、又、被告の答弁書により決裁権者及び損害額が特定されたため、その後原告らが検討した結果、上記の補充・訂正をするにいたった次第である。



証 拠 方 法

甲第2号証の1   昭和63年第2回半田市定例会会議録
              甲第2号証の2   昭和63年第8回半田市定例会会議録
甲第2号証の3   平成5年第4回半田市定例会会議録
甲第3号証の1   半田市補助金等判定会議設置要綱
甲第3号証の2   平成8年の半田市補助金等判定会議設置要綱改定
甲第4号証     住民監査請求に係る関係人調査記録
甲第5号証     「協会」正職員の給与に関する文書
甲第6号証     「協会」の組織検討委員会の中間報告について
甲第7号証     東海市の補助金見直し基準について
甲第8号証の1   「協会」に対する質問とご回答のお願い
甲第8号証の2   「協会」に関する再質問と申述書
甲第9号証の1   「協会」に対する質問とご回答のお願い(回答)
甲第9号証の2   「協会」に関する再質問と申述書について(回答)
甲第10号証    半田市職員措置請求書
甲第11号証    措置請求書に係る陳述書の結果について
甲第12号証    平成13年度の「基金」のとりくづし指示書・決議書
甲第13号証    平成14年度の「協会」への補助金の交付について

添 付 書 類

1 甲号各証 (写)          各1通

以上

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